共栄ニュース 7月号「物流会社の生き残り」

2024/07/01

東京商工リサーチの調査によりますと運送事業者の倒産は今年の4月度だけで30件に達し、前年同月の14件に比べると倍増しています。1月から4月の累計でも116件の倒産が確認されており、2011年以降では最も多い倒産件数となっています。
倒産の主な要因としては、燃料費等急騰する諸経費の値上がりに対し荷主への価格転嫁が十分でないこと、経営者の高齢化による後継者不足、ドライバーの高齢化による人手不足等が挙げられます。
首都圏にある創業30年のX社はここ数年急激に経営不振に陥り、取引先の金融機関からも融資の際には細かい条件を要求されることが多くなりました。創業者のA社長も70歳代後半を迎え、金融機関からの要請もあり後継者を具体的に検討せざるを得ません。
A社長の思いは、後継者にバトンを渡すにしても在任中に生き残りのための具体的な経営改善プランを明確にし、経営の立て直しを図ることでした。


<X社経営改善プランの概要>
(1)経営戦略の再構築
「既存顧客の深耕」
当社の最大の経営資源は、「顧客」である。
今後とも、当社の主力顧客であるY社及び関連企業への物流ニーズの対応
①物流品質の向上(在庫差異ゼロ化、ノー検品実現)
②コスト削減と物流提案力の強化
(2)事業の方向性
①経営資源の集中投入(主力顧客のニーズ対応)
②物流ワンストップ機能(輸送・保管・流通加工)の促進
③品質管理の徹底強化
④荷主別、車両別採算性管理によるコスト競争力の向上
(3)実行すべき取り組み
①短期的(1~3年以内)
1)財務体質の強化(再投資財源の確保)
・人件費管理(賃金、退職金制度の見直し)
・原単位管理(1時間当たりの収益、1km当たりの収益管理)制度の導入
2)物流品質強化の促進
・荷主との定期懇談会、安全会議、品質会議の定時開催
・事故、クレーム防止研修の実施(専門家による研修)
3)コスト削減への取組み強化
・運行3費のデーター整備とフィードバックシステムの導入
・成果配分制度の導入
4)コミュニケーションの円滑化
・福利厚生制度の再設計
・労使協議会の開催、職場会議の定着


P社にとって経営改善プラン作成の狙いは、金融機関の賛同と主要顧客Y社との価格交渉にありました。特に物流品質への強い思いは顧客との価格交渉に欠かすことができないようです

 


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